「そうはいかん!」
のなら、どうにもならない八方塞がりなのだが、世の中には『妥協』という行為があり、『交渉』や『譲歩』という行為もある。
地球侵略に来た怪獣とか異星人が、ウルトラマンに、
「ふふふふ、地球はいただいた」
と言ったら、ウルトラマンは、
「そうはいかん!」
と言い返し、絶対に妥協はしないで、闘う。
なぜウルトラマンが地球を守るために妥協しないかというと、信念が強いからでも、正義を愛する心が強いからではない。
(まぁ、もちろん、そういうところもあるけど…)
妥協しないのは、『絶対に勝つから』なのである。
絶対に勝つんだから、妥協する必要がない。
では、怪獣や異星人が、すっごく強くて、ウルトラマンが勝利する確率が五分五分だとしよう
ウルトラマンは、どうするのか。
いや、どうすべきか。
もし闘って負けると、もはや地球を守れる者はいない。
勝敗が五分五分ということは、丁半バクチ(さいころの帰趨偶数、コイントスの裏表、ルーレットの赤か黒…)をするということである。
ウルトラマンは真面目だから『賭け事』はしない…のではなく、地球の運命を丁半バクチに賭けてしまうわけにはいかないので、こう考える。
「わたしが勝てばいいが、負ければ地球は滅亡…。勝利確率は半々。私も死ぬのはイヤだし、大怪我も痛いし、ここは話し合いでもいいかも…」
そこで、ウルトラマンはこっそり侵略者と、裏で交渉をする。
あくまで、こっそり。
もし、
「今回は勝てる自信がないので、怪獣と話し合ってみます」
とか表明して、表立って公式に交渉しようとすると、
「テロリスト(地球侵略者)とは交渉するな!」
「そんなのウルトラマンじゃない!」
とか、順良な市民が抗議をするからである。
こういう交渉の時、侵略者は、
「ほんじゃ、日本列島の住民を奴隷や食料にしていいなら、それで我慢しよう」
とか条件を出す。
ウルトラマンは、そんな条件は呑めない。なにせ、日本で活躍してるんだから、ホームを修羅場にはできない。よって彼は叫ぶ。
「そうはいかん!!」
とはいえ、これは決戦を回避するための交渉なのであるから、譲歩は必要である。
「そんなら闘って勝負をつけようぜ」
と侵略者(怪獣 o r 異星人)が怒ると、
「う~ん、しょうがないなぁ。何事にも犠牲は必要だし…」
交渉はまとまり、ウルトラマンは日本を犠牲として差し出し、それで地球の平和は守られる。
…と思いきや、
「そうはいかん! 私としたことが、悪魔的な判断をするところだった! 日本を見捨てるなんてできるわけがない。ここは捨て身で闘って決着をつけなければ!」
と、ウルトラマンは考えを変えるのであった。
ウルトラマンは闘い、ギリギリのところで負けて、散る。
そして、地球は侵略者に滅ぼされてしまう…。
「そうはいかん!」
ん?
いま、誰か、そう叫んだ?
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