バレーボール県大会、敗退の夜の怪 [1]
バレーボール県大会、敗退の夜の怪 (1) |
『夏が来ぅれば思い出すぅ~』という歌がある。 そう、私にも忘れられない【夏の思い出】がある。 遠い昔の中学生の夏のことである。 その『不思議な経験(普通の意味での怪奇現象とは全く違う怪奇現象)』をうまく伝えられるか心配なのだが、書いてみたいと思う。 夏休みにバレーボールの県大会出場をかけた地区予選が、瀬戸内の島にある中学校の校庭で行われ、私たちは2位となって、念願の出場権を手に入れた。 たしか、万年弱小であった我が中学のバレー部としては、初出場の快挙だったと思う。 読んでいる人はスルーしてしまったかもしれないが、バレーボールという競技の大会が『校庭』で行われていたのである。 「炎天下なのに野外の校庭で!?」 という驚きではなく、 「バレーボールを野外で? 島で開催された大会ということはビーチバレー?」 という疑問を持ってほしいのだ。 もちろん、そのころ(数十年前の遠い昔)、ビーチバレーという競技など、まったくない。 そういう競技がオリンピック競技になるなど、当時口走れば、狂人と思われただろう。 (大袈裟じゃないぞ) 今では、バレーボールは体育館で行うスポーツであるというのが常識なのだが、私が中学生だったころは、(地方でもあったし)どこの中学校にも体育館があったわけではなく、野外スポーツであった。 ぼんとかよぉ~? ホントです! 広島市内などはどうだったか知らないが、広島県内の中小都市では、ただいたい高校にならないと体育館というものがなかったのではなかろうか。 バレーボールを野外でやるというのは、悲惨である。 夏だから暑いというのは、べつによい。陸上なども、野外で行われるし。 問題の一つは、風雨である。 雨はもうどうにもならないが、天気が良くても風が強いと、軽いバレーボールは空中で数メートルも位置移動する。 サーブはゆらぐ魔法球となり、トスやパスは物理学が必要(風力風向によるボールの移動距離を瞬時に計算)になる。 ようするに、自然の中では、まったく競技として成立しなくなるんである。 もう一つの問題は、擦り傷である。 バレーボールでは、『フライング・レシーブ』というものがあり、体を地面に水平に空中に投げ出して、手でボールを拾い、そのあと胸から地面に着地するものだ。 体育館の床だと、摩擦熱で火傷のようになる時があるくらいだが、これが野外の地面だと、胸と前腿と前腕(…まれにアゴも)は擦り傷で血だらけになってしまうんである。 もはや、苦行であって、スポーツではない。 私の太もも前側は、擦りむきすぎて、そこだけ体毛がなくなってしまっているほどだ。 う~ん、こわいぞ。 とはいえ、それが当たり前の時代だから、我々にはそれを回避する思考などはなく、胸に分厚い布を縫い付けて、堅い土の上でフライングレシーブをしていたのであった。 とまあ、そういう時代のそういうバレーボール事情であった。 それはともかく我々は県大会出場が決まり、歓喜した。 夏休みの後半に、三次市で県大会がある。それも高校の体育館が会場となるということだった。 「体育館でやるんじゃそうじゃ」 「どんな感じなんかのう」 体育館での試合や練習が皆無というわけではなかったが、ほとんど経験がないので、我々のチームは少し不安でもあったし、楽しみでもあったわけだ。 |
(このお題、つづく) |
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