睡眠薬 (私は歴史好き、妻は一切興味なし)
睡眠薬 |
私が日本の歴史に興味を持ったきっかけは、少年時代に読んだ少女漫画である。 山岸涼子氏の『日出処の天子』(ひいづるところのてんし)というタイトルで、厩戸皇子(うまやどのみこ)が主人公だった。 厩戸皇子というのは聖徳太子と敬称されることになる人なのだが、聖徳太子など実在しないとか、その後の大化の改新等なかったとかが今や定説になっているようでもあるが、それについてはここでは触れない。 『日出処の天子』を読むまで私の日本史知識は、学校教育のレベルであった。 それまで日本史には全く関心そのものがなかったのだ。 しかし『聖徳太子はバイセクシャルで妖艶な超能力者?』みたいに描く山岸氏の世界に惹かれてしまい、私はまず飛鳥時代の歴史書などを買って読み始めた。 奇談や【トンでも本】などの【おもしろ歴史】ではなく、アカデミックな大学教授が書いたような正統的な本である。 もともと私は活字が好きで何かを読み始めると、なんでもかんでも…となる。 最初は正統な歴史書籍ばかり読んでいたが、そのうち【超古代史】とか【古記古伝】といわれるようなものの解読本まで読んだ。 もちろん小説もいろいろ読んだ。 高価で重い日本書紀を自分で買って読んだりもした。(これはすぐ投げた) 古代史から始めて時代を遡り、明治時代まで読んでいった ただ私は熱しやすく醒めやすいので、あるとき、ふと興味がなくなる。 興味がなくなると、読んだことの大半は忘れてしまう。 でもたくさん読んでいるから、少しだけ覚えていたりする。 大半は忘れても、せっかくたくさん読んだのだから、誰かに話したくなる。 ところが日本史(特に古代史)に関心のある人は、世の中にほぼいない。 私は結婚した後、時々様子を見ながら妻に歴史の話をするようになった。 その手の話をする相手がいないので、しょうがないのである。 それに対する妻の態度は一貫していた。 まったく興味がなく、まったく話を聞かないのである。これっぽっちもだ。 夫に対しあまりに無慈悲で見事な無関心なので、私は逆に感心したほどであった。 さて、 その妻はどこでもいつでも、すぐに寝れるという特技がある。 「不眠症というものが理解できないわ」 という人間なのだ。 が、そんな彼女も年に数回だけ、どうしても寝付けない日があるようだ。 そういうときに、彼女は私に言うのである。 「歴史の話をして!」 と。 「いつの時代?」 「いつでもいい」 そう、彼女はいつの時代でもいいし、どういう内容でもいいのである。 「じゃあ毛利の厳島合戦!」 と私が話し始めると、3分もしないうちに寝息が聞こえるのだ。 妻に言わせると、(妻は飲んだことはないそうだが)、 「どんな睡眠薬より、あなたのの歴史話が不眠時に効くのよ」 ということである。 (このお題、完) |
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