姿のない登場人物 [テレビドラマにて] (妻よ、キミは正気か?)

姿のない登場人物(TVドラマ)

ある日のこと。
2時間ドラマ好きの妻が、ポツリと言った。

「2時間ドラマにミステリーって、登場人物の数が限られているから、だいたい途中で犯人の見当はついちゃうんだけど、昨日はなんかヘンテコで…」
「へんてこ?」
と、私。

「最後に犯人は捕まったんだけど、ドラマを通じて何度も名前が出てきているのに、ぜんぜん姿を現さない人物が二人もいたのよ。で、結局、終わりまで一度も登場しないの。びっくりだわ」
「へぇ…」と、私。

イヤな予感はしたが、訊かずにいられない。

「どういうこと?」
「ソウルメイトっていう、ソウルに住んでるらしい主人公の友達が出てこなかったの」
「…?」

ソウル在住?

「それと、ソンゲン氏という人も」
「ソンゲン氏?」
「あ、苗字じゃなく、看護師とか美容師とか救命士みたいなものかも…」

      (二人は、しばし沈黙)

私は妻の、こういう言動には慣れている。
そういうのを真正面から受け取って考えると、二人で森の中を迷うことになる。

「もしかして…、いやきっとそうだが、ソウルメイトってのは【魂の友】って意味合いの、【互いに深い精神的な繋がりを感じる大切な人】ってことじゃないか?」
「親友みたいな?」
「そう。そういう親友みたいな登場人物はいなかった?」

「出てきたけど、その友達は東京に住んでた」
なるほど…。東京在住…のソウルメイト…。

謎は一つ、解けた。

「で、そのドラマ、どういう話だった?」
「なんか重い病気で苦しむ人がいて、もう助からないからとか…」

      (二人は、また、しばし沈黙)

「もしかして、遺言をめぐる尊厳死のからんだようなストーリーじゃない?」
「ソンゲン氏はからんでたけど、その人、最後まで出てこなかった。謎の人」

たぶん、謎の人は、妻よ、あなた自身だ。
ん~、ほんとかよ…。

(このお題、完)

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2018年11月02日