犬といったら、”シェパード” [4]

犬といったら、”シェパード” (その4)

初代シェパードの【ドル】が、あっけなく死んだとき、私も弟も泣いた。

まったく懐かず恐ろしい犬だったが、朝起きて庭の小屋の中で冷たく横たわっているのを見たときは、可哀そうでならなかった。

やはり、一緒に暮らしているのだから、恐くても【ドル】に対して、愛情が湧いてはいたのである。

死骸は保健所なのか、業者なのかが引き取りに来た。
小さな庭に大きな鉄製の犬小屋(檻)だけが、寂し気に残った。

ところが…。
驚くべきことに、親父は、すぐさま次のシェパードを買ってきた。

間違いなく『今度は愛犬に自分が愛されたい』というリベンジだったと思うのだが、我々兄弟が思いのほか悲しんでいるので元気づけたかった、ということもあったのかもしれない。

ただ、またしても、生まれて間もない『いたいけない子犬』ではなく、生れて1歳以下だったかもしれないが、すでに成犬近くにまで育ったしまった犬だった。

先代と同じように、成長してしまったら懐きにくいので価格が安かった、のだろう。たぶん。

2代目シェパードの名前は、【Arrow(矢)】であった。

これも血統書上の名前なので、こちらで勝手に親しみやすい愛称を付ければよかったのだが、『英語の由緒ある名前』らしいということで、そのままであった。
(再度書くが、ドイツ原産犬なのだから、ドイツ語の名前ならカッコ良かったのになぁ)

【アロー】は、初代【ドル】よりも大人しかったが、やはり幼犬ではないので、体が大きいから可愛いということもないし、すでに自我?もできていて、我々には懐きにくかった。

この【アロー】も、我が家に来てしばらくの間、夜になると遠吠えをした。
ほんと、オオカミみたいであった。

「見た目はデカイが、まだ子供だから寂しいんじゃろう」
と、以前聞いたことのあるセリフを親父は、また言った。

「こいつは、オレに懐いてくれるかもしれん。まぁ、前の犬よりは、よかろう」
という期待をもっているようだった。

気の毒なことに、その親父の期待は、またもやすぐ裏切られ、【アロー】も親父には敵対し、食事をくれる母には従順になるのだった。
(我ら小さな子供の兄弟は、当然格下扱い)

もちろん、親父も、
「今度こそ、うまくやるぞ」
と意気込んで、積極的に【アロー】の世話をしようとし、声をかけたり、餌を運んだりしたのだが、どういうわけか(前世で犬をいじめていたのか…)、いつも吠えまくられて噛みつかれそうになるばかりであった。

「なんで、【アロー】はワシになついてくれんのじゃろうか」
と、親父は嘆いていたが、それを見ていた我が家のヒエラルキートップの【猫のタマ】は、胡散臭そうな目であった。
この【タマ】も、日頃から、ほとんど親父に近寄らなかった。

どういうわけか、動物に(人間にも?)好かれない哀れな親父であった。

(つづく)…続編は、そのうち…。

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2020年12月21日