成田空港の密輸団 [3]

成田空港の密輸団(3)

取り調べは、部屋での1vs1の聴取だけではない。
以下は取調官が説明してくれたことである。

我々が撮影したフィルムとカメラはいったん全部没収されて、1時間かけて何が撮影されているか徹底的に調べられた。
そこにポルノ映像があるかないかだけでなく、犯罪がらみの映像や画像がないか調べたそうである。

荷物も全部徹底的に調べられた。
たとえば、ハンドクリームのチューブなども、中に麻薬や銃弾などが隠されていないかということで、全部開けられた。

購入したビデオテープはそれがポルノだからということだけではなく、その中に分解した銃を隠して密輸していないかということで解体された。
(X線とか探知機とか、また未整備だったのだろうか?)

そういうふうにあれこれ調べられ、なんか、いっぱしの犯罪者(ギャング)扱いである。
(実態は、善良な小市民)

K氏が少し(…かなり)抵抗したので、我々の取調は詳細に時間をかけて行われることになったらしい。
(通常検査がどういうものか知らないので、私の勝手な想像だが…)

とはいえ、我々はただの小市民だから、(K氏だって、ただ購入物量が通常より多かっただけで、交友関係が広いとお土産が多くなるというだけ?)、何も犯罪に関係する者が見つかるわけがない。
なんというか、『お仕置き』みたいな感じであった。

最後に非公式な始末書に、いろいろ書かされ、拇印を押さされた。
「今回は単なる注意ということで、特に何もありません」
ということであった。

我々は早朝に成田に着いたが、解放されたのは10時すぎで、車で都心に戻ったのは昼すぎであった。

ゲーム視察旅行団の解散前に、我々はファミレスで昼食兼視察総括会をした。

本来は、『今後のゲーム開発において、今回のゲーム展示会の視察をどう生かすか』というようなことがテーマになるはずであったが、もともと慰安旅行というのが趣旨なので、その時もその後も、そのような前向きで建設的な意見交換はしなかった。

そのとき我々の気持ちの中にモヤッているのは、手荷物検査官たちの横柄な態度とポルノ品の全没収に対する憤りであった。
(小市民かつ俗人) 我々は食事後の小一時間、熱く語り合った。そのころ私と社長はひどく不仲だったが、そのときは同志のようであった。

「あいつらに、あんなことする権利はない!」
(職務柄、ないこともない)

「法律(みたい)だから仕方ないけど、あの扱いは何だ!(」
たしかにそうだが、K氏がだいぶ荒れたからなぁ)

「没収されたものは、どうなるんだ!」
(私物化?)

「次回は見つからないように、偽ラジカセを作って中に隠す工夫を…」
(前向きだが、筋違いな姿勢…)

「いや、鞄そのものに精巧な隠し袋を作って…」
(前向きだが、そういうエネルギーはゲーム開発のほうに…)

そこで相談されている内容は、隠して持ち帰るものがエッチな本やビデオということで犯罪性は低いが、人間性も低い会話であった。

人間性の低い会話を繰り返し、怒りが鎮まってくると、我々はそういう会話が無意味に思えてきた。
すでに、エッチなあれこれは、すべて失ったのだ。

しかし人生と生活は、これからも続く。
前向きに生きなくては!

みんなが鬱憤を吐き出し尽くし無口になったところで総括会は終了した。
それ以後、この話はこのメンバーの誰ともしたことはない。
私がその社長とますます不仲となり、その会社を離れたということもあるが、どうにも【エッチな雑誌やビデオ密輸入?であんなツマラナイ目に遭ったこと】が、どうにも【情けない】体験に思えたからである。
(たぶん、みんな)

もはや世間では、こういう【物悲しい】事件は激減したであろう。
そういう意味でも、インターネット社会は【革命】なのだ、たぶん…。

そういう社会学的な視点を提示して、このテーマを終わろうと思う。
そうでもしないと、内容が低俗すぎる…?

(このお題、完))

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2019年01月22日