成田空港の密輸団 [2]

成田空港の密輸団(2)

そのそも、こんな【恥ずかしい話(ポルノ持ち込みで取り調べ)】を、自分のサイトの実話エッセイに書くつもりなの?と、書く前に思案しなかったわけではない。

けれど、取り調べは警察ではなく手荷物検査員によるものだし、妙な始末書みたいなものを書かされたが、形式的な注意(江戸時代でいえば『畏れ入れいぃ!』)だけであり、正式な罰則を受けたわけでもなかったので、(恥ずかしいから逆に)胸を張って、この経験を語っておくべきだと思ったわけである。

前述したが、この後で語る取り調べ中で説明を受けて知ったのだが、その取り調べの本当の目的はポルノなどではなく【薬物や拳銃の密輸】だったようなのだ。

事の発端は、K氏のポルノの持ち込み数量が極めて多数だったため、
「ちょっと、これは見逃せないないでしょ」
と判断されたということなのだろうが、ポルノを大量に持ち込もうとする人間は、ほかの物も…ということらしかった。

さて、連行された個室で待っていると、係官が来た。

「何をしたかわかってるんですか。犯罪ですよ!」
と、いきなり、いかにも私が重大犯罪人であるように扱ってきた。
そういう【やり方】が【マニュアル】なのだろうけど…そういうのは、どうなんだろ。
善良で小心な一市民に対して、そういう脅しはいただけないぞ。

「たかがエッチな本とビデオじゃないか。おまえだって見るだろう。ん?没収したら、それはどうなるんだ?絶対に見ないで廃棄するのか?いや、絶対こいつら見るだろ。う~ん、許せん!」

そう心中では毒づいていたが、私は(見た目と違い)小心な小市民であるから、しおらしく、
「はい、すみません」
と、言っておいた。

(情けないぞ!反抗しろ!といっても政治犯などなら何となく主張もありそうで少しはカッコいいが、エッチ雑誌とビデオの摘発で反抗するのもなぁ)

そもそも、K氏はともかく、私が鞄に入れておいたのは、ラスベガスの街で買った雑誌2冊とビデオ2本だけであった。
どれにしようかな?と、かなり迷ってやっと買ったのに、あえなく没収されるとは…。

社長とプログラマーH氏も、持ち込みポルノはそのくらいの数量であった。
K氏に比べれば、マフィアと高校の番長くらいの違いがあるはず!

「それにしても、買っていたのは知っていたが、K氏はあんなに大量に購入していたのか。びっくりだ。金があるのだろうし、そういうものをお土産に渡す交友関係も多いのだろう」
などと、私が考えながら始末書みたいなものに記入してしていると、隣の部屋からものすごい怒鳴り声が…。

それは、K氏であった。

「なんだとぉ!おめーら、えらそうに何言ってるんだぁ!お前ら、こういうもの見ないのか?没収したらチラリとも見ないで焼くのか?みんなで分けるんだろ?えぇ!!」

「う~ん、いいぞ。もっと言え!正論?だ。何が取り調べだ!あんたらは聖人君主かよぉ!」
と、内心で私は喝采したものの、もっと違う思いもあった。

「おお、こりゃマズイぞ。Kさん、おとなしくしてくれ。どうせ持ち込んだものは没収されるし、早く解放されて、この場を去ろう。やはり法は犯している?らしいし…」

しかし、隣室のK氏の怒りのボルテージは上がる一方のようであった。
怒声は大きくなり、ドンドンと机をこぶしで叩いているのか、足で蹴っているのか、すごい音も聞こえてくるぞ!

これは、タイホになっちゃうんじゃないか?
警察官相手でなくとも、公務執行妨害とかで。

取調官の声が聞こえないのだが、なにかK氏の癇に障ることを、いっぱい言っているのだろうなぁ。ねちねちと。私も目の前の男に、いろいろ言われているし…。

そのうち隣室では、K氏だけでなく取調官まで怒鳴り始めた。
う~ん、すごくマズイぞ!
(少し面白いが、私も当事者なんだし、やっぱマスイぞ。どうか穏便に…)

そのうち、
「取っ組み合いをしているのか?」
というような物音までし始めた。

う~ん。取り調べという立場を利用して、いろいろイチャモンをつけられて、ブチギレたのかな、Kさん?
もういいや、こいつら気に入らないし、もうやったれ!
…と思わないこともないんだが…。

いやいや、Kさん。ここは堪えてくれ、耐えてくれ。これ以上の面倒はホントにマズイぞ。ポルノじゃなく傷害事件になるぞ…とも思うし。

しばらくすると隣室も静かになった。ついにK氏も、諦めたらしい。

私は(他の人もそういうことをされたと思うが訊かなかった)、壁に手をつかされ、ズボンとパンツを下げられて股間に手を入れられた。

「何をするんだよぉ!こいつらのほうが、ヤバイじゃん」
と思いはしたが、小心者の私は、されるがままにされていた。

麻薬の袋を股間に貼って隠していないか探したのだろうが、なにやら性的虐待だぞ!
(今でも、取り調べの時、こういうことするのかな?)

(つづく)

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2019年01月22日