【絵馬013】 言いたいことを言えるように!
<今日のお題> |
言いたいことを言えるようになりたいんです! |
その絵馬に書かれた願い事の、本当の意味とは? |

【スノーウィー神主のつぶやき】
私の経験上、この手の願文には注意が必要なのです。
と言いますのも、氏子の方で私の存じ上げている、ある奥様は、すごく気が弱そうで、いつもビクビクと人の顔色を窺っているような方なのですが、すごい『内弁慶』なのです。
つい先日も、この奥様の旦那さんが社務所に来られまして、
「雪玉神社のおみくじの、大吉の割合はどのくらいなのだろうか?」
という質問をされたのです。
この旦那さん、昔はプロレスラーを目指していた強面の壮漢で、身長は190cm、体重は110kg超えの筋肉隆々の人です。
神社のお祭りでは、10人で担ぐお神輿を、たった一人で頭上に持ち上げて、町内を練り歩くという猛者でもあります。
あ、お仕事は、保育園経営の保育士さんです。
おみくじの中の吉凶の割合は企業秘密ですので公開できないことをお伝えすると、この旦那さんの表情がひどく曇りました。
「どうかされましたか?」
と、私がお訊きすると、
「いやぁ、女房がね…」
と、言われた後、口をつぐまれたのです。
神主として人々の人生を見守り、精神科医として人々の心を見つめてきた私は、ピンときましたので、彼が話しやすいように水を向けました。
「奥様が何か? どうぞご遠慮なく、おっしゃってください」
「実は…女房がね…。今年5回引いたおみくじが、全部小吉や末吉だったというんで、気を悪くしてましてね」
「ははぁ…でも、、小吉や末吉は、決して悪いわけではないですよ。凶や大凶だって入ってるんですから」
「まぁ、オレもそう言ってるんですけどねぇ。女房は気が小さいんで、大吉を引かないと心配で眠れないって言うんすよ」
「…」
「でね、女房のやつ、なんか睡眠不足と心配でイライラしちゃってて、オレに当たり散らすんですよ。もう怖くって」
「…」
「今度、女房がおみくじを引きに来たら、なんていうか…言いにくいんですけど、おみくじの箱に細工して大吉を引かしてやってくださいませんかねぇ」
「インチキの大吉?」
「そう、インチキの大吉。忖度の大吉」
「ははぁ…」
「こんなバカな話を神主さんにできるか!って女房には言ったんですけど、女房のやつ、自分は気が弱いから自分ではそんなことはとても言えない。あなたが神主さんに話をつけてきてよ、ってことでオレが…」
私は奥様に何度もお会いしてお話もさせていただいていますが、彼女は私の顔も見れない内気オーラ満開で、小さな声でうつむき加減にボソボソと話される印象しかありません。
まさに内弁慶の鑑!
ティピカル・内弁慶!
「わかりました。御家は氏子総代もやってくださっているわけですし、この件は『特殊事情』という名目で、私が良きように取り計らっておきましょう」
「ほ、ほんとですかぁ! ありがてぇ!」
旦那様はスキップをしながら、満面の笑みで帰られました。
帰宅して、奥様にこの報告をして、褒めてもらえるのがうれしいのでしょう。
じゃんけんと同じで、自分が気が弱いと思っておられても、それは誰かに対してで、別の誰かにはわりと平気で横柄にしているのが人間です。
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