尿路結石 [2] 

尿路結石(2)

しばらくして(私にはなが~い待ち時間だった)救急隊が来た。

「サイレンを鳴らさないでくれと頼んでみろ」
と電話で妻に頼んでもらっていたが、そんな要求は無視される。救急車はかならずサイレンを鳴らす。当たり前のことだ。

家の外でサイレンの音が響いたときはホッとしたが、近所中に
「病人あり!」
と告知したみたいなものでやや恥ずかしいし、夜更けに迷惑をかけるわけだし、とか色々なことを思った。

でも、それは痛みがやや和らいだあとでメイクされた、私の脳内でお【かすかな思い】である。

実際には、痛くて痛くて、そんなことはどうでもいいというくらい、痛たかった。

「はやく何でもいいから処置しろ~!病院に連れていけ~!」
という叫びだけである。

救急隊員は、極めて冷静で、極めて落ち着いていた。
もちろん、そうあるべきだし、そうあらねばならない。
救急隊員が、あたふたしていてはいけない。

それはわかるが、のたうち回っている私とすれば、
「なにを、のんびとしてるんじゃぁ~!」
である。

隊員は記入用紙を手に、私を質問攻めにするのだ。
私はそれに答えながら、
「いいから、はやく痛み止めを打つなり、車を出すなりしろぉ!」
と、心の中で怒鳴っていた。ほんとうに、死ぬほど痛かったから。

本当に怒鳴ると隊員が気分を害し(…人間だからあり得る)、処置の手抜き(…それはしないだろうけど)をしたら困るので、表面上は救急隊員の指示通りおとなしくしていた。

後で落ち着いて考えるに、経験を積んだ救急隊員は、私が尿路結石であることを一瞬で見抜き、激痛の程度はともかくとして我慢するしかないのだし、私の様子ですぐ命にかかわることでもなさそうだと判断できたのだろう。

実際、20数分後に病院に着いたころには、私の激痛は半減していた。ちょっと結石の位置がズレたのだろう。(そのときはまだ自分が結石だと知らなかったが)

救急外来で痛み止めを打ってもらい、そのままお泊りとなった。
翌日病室で起きたら、痛みがまったくなくなっていた。

「尿路結石だと思いますが、検査をしないと確定できません。でも今回は結石が体外に出たと思われます。いちど検査を受けてください。検査はこの病院でもほかの病院でもいいですよ」
「そうですか…結石」

救急車で運ばれた病院は自宅から遠かったので、私は近隣の病院で検査することを医師に約束して、半日の病院滞在(入院ではない)で帰宅した。

だが、 のど元過ぎれば…である。
小さな結石は引っかかっていた尿路から出てしまうと、まさにケロリ!なのである。
私は検査など、する気などなくなっていた。

だって、もうなんともないんだもん!

(このお題、つづく)

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2018年12月08日