尿路結石 [4]
尿路結石(4) |
それにしても…。尿路結石とは、へんな病気だ。 体内(腎臓)に石ができ、それが尿路に出て、途中で詰まって痛みを発し、それをオシッコで流し出すのが、とりあえずの治療なのである。 結石の引っかかる場所によって激痛となったときには、(簡単には処置してくれないが)痛み止めを打ってもらい、ベッドで歯を食いしばって耐える。それしかない。 痛み止めは強力なものを使っていたので、(明確に記憶していないが)1時間以上は時間をあけて、連続2回までしか打ってくれない。 あとはどんなに痛くても、我慢である。 私は、痛みには弱くないと自負するが、あまりに痛くてナースコールを押し続けて、醜態レベルの哀願をし、少し早めに3回目の痛み止めを打ってもらったりもした。 それほど、ほんとうに痛いのである。なんというか、気絶しそうなのだ。 外科の4人部屋だったから、お仲間はみんな骨折だった。 ギブスをして不自由そうだったが、折れた直後ではないので、みんな談笑しているレベルである。 「なんなの?」 と私がやや落ち着いたときに、ひとりが訊いた。 「尿路結石です」 「ほう、痛いらしいな。 「すごいっすよ」 「ははははははは」(全員) 病院に運びこまれた翌日の午後になるとやや痛みがおさまったので、私は【水分を大量にとる→トイレに行く】以外のこと、つまり【運動】をすることになった。もちろん医師の指示である。 私は大量の水分を摂取してから、妻に買ってきてもらった縄跳びを持って屋上にあがった。 太陽に照り付けられながら、できる限り長く跳び続け、縄跳びに飽きるとドンドンドンと振動を伴うようなランニングをした。 すべて、振動(と小水の水流)で、尿路に引っかかっている結石を出すためだ。 それにしても、屋上にいる私は、はた目には、『すっごい健康な人』でしかない。 屋上で飛び跳ねて走り回って結石を出すわけだが、欠席の大きさや形状によっては、ストンと簡単に出るわけではなく、尿管内でちょっと移動して、また狭いところか曲がったところで引っかかっる。 そのときの位置が悪いと、またまた突然の激痛になることがある。 そうなると、私はナースコールで痛み止めを要請(強要)する。(でも簡単には打ってくれない) 痛み止めを打って、しばらく癖通に耐えていると、結石の位置が変わったのか、薬の効果なのか、痛みが小さくなったりもする。 すると、ゴクゴクとポカリスェットを飲み干して、手に縄跳びを持ち、私は屋上に向かう。 これを繰り返すのである。 それを見ていた同室の面々は不思議に思うらしく、 「ベッドで痛みに悶えていたと思ったら、縄跳びをしに屋上に行ったりするのは、気の毒だけど、見てておかしいなあ。やっかいなもんだ」 と、私に同情しつつ言っていた。 入院2日目の午後、私はビーカーに張ったカーゼの上に小さな結石を見つけた。 2ミリくらいの、石というより粘土みたいな塊で、なぜこんなものであの激痛が生じるのだろうと不可解であった。 おそらく、もっと大きかった結石が分割されて出てきたのかもしれない。 が、私がガーゼの上で発見できた ”石” は、それだけだった。 「尿道が部分的に細いような人もいます。小さな結石でも詰まると痛いです」 「なるほど」 診察時に医師の説明を聞きながら、私はうなづいた。 結石が出てしまい、すでにケロッとしていた。 --------------------------------------------- 私は検査後に退院し、それから20数年、尿路結石に関しては何事もなく過ごしている。 医師によると、 「結石ができる原因は不明です。食物が関係しているという説もあります。普通の(食)生活をし、適度な運動をしてください。特に予防策はありません」 ということであった。 時々、左右の腰部が痛くなることがある。 私は、一日の大半をキーボードを叩くか、マウスをグルグルして過ごすから、腰痛餅でもある。 だから、その痛みが腰痛なのか、もしかして小さな結石なのか、わからない。 あれ以来、一度も激痛になったことがないから、結石ではなかろうと思っているが、すっと尿路に引っかからないような小さな石を作り続けているのかもしれない。 別だん、健康に良いこともしていないが、気が向いたら30キロのダンベル2個で、筋トレしたりはする。 成長ホルモンがどんどん減衰しているからだろうが、身体の回復力が著しく低下している気がするこの頃は、筋トレしているのか、体を痛めているのか、わからないこともある。 |
(このお題、完) |
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