腰痛は職業病?~近所にできた接骨院(3) |
自分が『腰部脊柱管狭窄症』であることはわかっているが、私は自分の腰痛は筋肉要因だと思って接骨院に来ている。 もちろん、狭窄がすべての原因かもしれないが、それならそれでよい。 そういうことについて、接骨の専門家の話が聞きたいのだ。 物理的な不具合である『腰部脊柱管狭窄症』を接骨院で直に治療できると思っていないし、狭窄をどうにかしてもらいたいと思っているわけでもない。 とりあえずは、カチカチになっている筋肉ほぐしてほしいのだ。それで腰痛が治るかどうかもわからないけど。 「私が重症判定になった理由が、私の狭窄症ということですが、じゃあ狭窄症が治せるんですか?」 「治せません。けれど体の歪みを矯正すれば、痛みは治ります」 ふ~むむ、おもしろくなってきたぞ。 担当者は、私の腰痛の経緯について詳しく訊くこともなく、狭窄症判定にいたった整形外科の診断にも関心がなく、私の現在の苦痛の程度や日常生活への影響にも触れず、痛みで苦しんでいる私に一切の同情の言葉もなく、(おそらくマニュアル通りに)こう続けた。 「長い治療が必要です」 「ほう」 「1年以上かけて身体の歪みを矯正すれば、腰痛は治ります。1回の治療でかなり正常になりますが、長年の身体の癖があるので、歪みはすぐ元に戻ります。ですから何十回も治療が必要なんです」 体の横向きからの写真と、簡単な問診だけで、治療方針を決めるとは、すごいな…。問答のマニュアルだろうけど。 なにしろ、前後の患者と担当者の話が聞こえるので聞いていると、全員に同じ治療方針を言っている。 症状って、個々じゃないの? 「治療のほかに、日常生活で色々気を付けることもあるんでしょう?」 「ありますが、癖になっているので癖はなかなか直りません。矯正治療をすればよいのです」 「ほう」 なぜ日常生活での注意点などを教えてくれない? ここはそういう指導はしないようだ。 「それでですね、あのトムソンベッドで矯正して、インナーマッスルを鍛える機械で筋肉をほぐして強くしていきます。これが1回セットで7000円くらいですけど、週2~3回、1年で100回~150回の治療で、70万~100万になりますが、今日、1年分の治療を申し込まれたら、あっ、お支払いはカード分割でもいいです。かなり割引になります」 「へぇ…」 「ともかく1年くらい治療しないと治りません。それと、途中で治療をやめても治療費は戻りません」 この人、頭がおかしいのだろうか? いや、マニュアルで言わされているようだから、この接骨院グループがどうかしているのだろう。 聞いていると、患者全員に、まったく同じことを言っている。個別の症状と関係なく。 「そうですか。考えてみます。今は決められません。いまから治療体験ができるそうですけど、まだその治療も受けてません。そもそも1回の体験で1年分の治療費の前払いなんて決められます?」 「大丈夫です、当院は、すごい実績があります」 ますます、おもしろいぞ。 私は腰痛を治したいし、それについて一緒に考えてもらいたいのだが、そういう親身さは欠片もない。 治療に正当な費用がかかるのは仕方ないと思うが、お金の話の前に、私の症状や治療についての話を少しはしてもらいたいぞ。 「よくわからないんですが、症状って人ぞれぞれですよね。私は腰痛だけど、先ほどの人は肩や首。別の人は膝痛や股関節痛。でも話を聞いていると、全部基本的に同じ治療なんですよね。トムソンベッド、インナーマッスル、電気にマッサージ」 「もちろん治療する箇所が違います。なににせよ、体の歪みが痛みや不具合の原因ですから、どこが痛くとも、全身の歪みを矯正し、インナーマッスルを鍛えるという基本が同じなんです」 理論が単純であることは、良いことだ。 だが、これは物理法則の話ではない。オッカムの剃刀というわけにはいかない。 そういう説明なら、 「身体の調子が悪いのは、宇宙の法則に逆らっているからだ」 というのと同じである。無意味である。 さて、どうしようかな。 (このお題、つづく) |
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