1 | 序 |
---|---|
2 | 腰痛の始まりと原因 |
3 | 最初の診断【脊椎分離症】 |
4 | MRIで【腰部脊柱管狭窄】 |
5 | 骨ではなく筋肉原因? |
6 | 硬膜外ブロック注射1 |
7 | 硬膜外ブロック注射2 |
8 | 硬膜外ブロック注射3 |
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<序>
2016年夏、私に腰痛が発症。某国立病院でのMRIで【腰部脊柱管狭窄症】と診断、いろいろ回り道をして、2017年2月になりやっとほぼ回復。
私は一時期、医療機器関係の広告などを手がけたことがあり、医療機器ではないがアメリカ製のバックサポーター(腰ベルト)も扱ったこともある。
そのため腰痛についても少し勉強していたし、日常的に使用するわけではないが、20年前以上から自分や家族用のバックサポーターを持っている。
そういうことで 私は、『腰痛の概要(原因や治療)』については、一般的な人より意識も知識も多少は多くあったと思う。
ところが、私が経験した腰痛は、私の考えているものと違っていた。
私の考えと違うといっても、私の思い込みと知識不足ということで、ネット上には私の経験した腰痛に似た話はたくさんある。
ポイントは、
【私の腰痛の原因は背骨(腰椎)ではなく、筋肉だった!】
ということ。
多くの整体のプロの方たちにとっては、これは当たり前の話なのだが、世の中では(整形外科の医師でさえ)当たり前ではなかったりする。
それやこれやで、自分で自分の経験を通して、
「腰痛って、なんなんだろう?」
と、自分の身体で色々試した。いや痛みから逃れるため色々やってみるしかなかった。
ここに書かれているのは、その記録である。
いうまでもなく、腰痛には背骨が原因のものがたくさんあるに違いない。(私の母はそうであった) が、私の場合はMRIで狭窄症が明らかに存在するのに、それが原因ではなかったのだ。
ここに書くことは、あくまで【私個人の腰痛に関する経験】であり、専門家でもない【私個人の考え】が書かれている。そしてこれは、【治療法ではなく個人の体験談】である。その前提で、お読みください。
ただ、読まれる方の状況によっては何か役に立つ部分があるかもしれない…と思い書いてみたのである。腰痛は、ほんとうにつらいですから。
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<腰痛の始まりと原因>
私の腰痛は、2016年7月に発症した。
最初は「あれ、ちょっと痛い」というくらいで気にもしなかったが、少し違和感を感じていた。
違和感というのは、痛みの位置と痛みの感じのことで、痛みの位置は仙骨上部の真ん中で痛みは鈍痛ではなくピリッとするようなものだった。
「仙骨上部あたり」というような『ある範囲』ではなく、「ここが痛む!」とピンポイントに指すことができた。 尾骨の一番下から上のほうに十数センチのところで、触るとすぐ硬い仙骨にあたり薄い筋肉があるだけである。
それまでも腰周辺のちょっとした痛み(背中の背骨のある中心線部分ではなく、腰周りの筋肉痛のようなもの)は時々あった。おそらく誰にでもあることだと思う。いわば【軽微なぎっくり腰】みたいなものである。
「あれ、ひねったかな?筋肉が疲労したのかな?」
と思うし痛みはするが生活に大して支障はなく、そのうちあっさり治ってしまうようなものだ。
そういうわけで、少し違和感を感じたのだが私はそれをたいして気にも留めずにいた。
ところが、その腰の痛みは治らなかった。それどころか、少しずつ少しずつ悪化していった。痛みと痺れで歩けなくなるほどに。
<原因?その1>
【座りっぱなしの生活?】
私は、ほぼ自営業で自宅勤務である。
若い頃はゲーム開発をし、その後はデータベースの仕事を中心に仕事を請け、ほぼ毎日パソコンの前におり、忙しいときは連日十数時間座り続けるときもあった。
座りっぱなしは腰痛の原因になるという。
それについて、よくされる説明は、
「座っているときは立っているときよりも腰椎に負担かかかる。そのため腰椎が圧迫されて変形(ヘルニアや狭窄)が生じる」
というものであろう。
背骨の構造が変形することが原因で腰痛となるストーリーである。
後で詳細を書くが、実際に私の背骨構造も変形しており【腰部脊柱管狭窄症】と診断され、MRI画像(実際の私の画像はここをクリック)を見ると、素人でもわかるような2箇所の狭窄があった。
ただし、L1/2、L2/3という腰椎でも上部であり、座っていてそこに圧力がかかると思えない。 しかし人体は不思議なものだし、そういうこともあるのかもしれない。
ともかく、私には明らかな【腰部脊柱管狭窄症】(物理的な背骨の歪み)があることが判明するのである。 そして、それが私を【腰痛の迷路】に誘いこむことになる。
さて、この座り続ける生活が腰痛の原因なのだろうか?
<原因?その2>
【冷凍庫で筋トレ?】
さて、仕事柄普段は座っているばかりなので、私は若い頃はジムに通い水泳や筋トレに励んでいた。しかし仕事の納期になったりすると休む。しばらく休むと億劫になる。ジムが遠く。
そういうお決まりのコースとなる。
そこで自宅にダンベルなど用意して運動したが、それもだんだん面倒になる。
当然、筋肉は落ち、体はフニャフニャとなる。
そこで「いかん!」と思い、また運動を始める。またサボル。その繰り返しである。
数年前のある日、思いついた。
「筋トレができる仕事をすればよい!」
ジム通いや自宅自主練は、どうしてもサボる。だが仕事なら筋トレ(仕事)をサボれない。その上お金ももらえる。これはすばらしいアイデアだ。
調べてみると、近辺の冷凍倉庫でピッキングの仕事があった。
私は、そこで週2日、1日6時間程度働くことにした。これならば通勤5分で自分の仕事に影響もない。ジム通いと思えばよい。
そこでの作業は数時間冷凍商品の仕分けをし、その後2~3台の配送トラック(3~7トン積)に商品を積み込むというもの。商品は1つが5~20Kg程度のものだが、平均すると8kgである。
一日のトラックへの積み込みは、私の場合で5トンから(たまに多いときで)10トン超えくらいで、まず良い筋トレといえた。氷点下という環境に問題がありそうではあったが。
そこでの仕事は楽しく、数十年続いている私のデスクワーク中心の生活の気分転換にもなるし、職場の若者と今時の話もできる。年配者とはプロレス談義ができる。
そこで働き始めて3年経過した頃、腰痛は発生したのである。
当然、「体を酷使したからだ」と思うところであるが、私はそうは思わなかった。
なぜなら腰の違和感や前兆がなかったし、最初の腰の痛みは作業中ではなく自宅にいるときだったからだ。
倉庫仕事は週2日程度であったから疲れもなかった。それどころか筋トレのジムと考えていたので、なるべく荷の多いトラックを選んで積んでいたし、毎日プロテインを飲み、肉も数百グラムは必ず食べたから、筋肉がつき(背中や肩の筋肉は盛り上がり、妻には気持悪いと言われるほど…)自分では健康だと思っていたからだ。
私はとっくに50歳を超えていたので、もちろん荷重運動による体への影響にはそれなりに気をつけていた。それなりに…でしかなかったが。
冷凍倉庫内は防寒作業着を着ていれば寒くはないが、積込トラック内は氷点下10度にもなるから筋肉は固まるだろう。そのうえ一日に総量で何トンも運ぶ(トラック積み込みでは頭の上まで持ち上げて積む)のだから、腰痛になる同僚は多かった。
この労働(自分的には筋トレ)が、腰痛の原因なのだろうか?
<原因は筋肉ケア忘れ?>
結論から言えば、上記2つの私の生活習慣は【直接の腰痛原因】ではないと、私は考えている。
もちろん間接的には原因である。間接的には…といえば何でも原因になってしまうので無意味な表現ではあるが、「座りっぱなしの生活」「冷凍倉庫での作業(筋トレ)」が原因だ!とは、やはり言えない。
原因は、私の【筋肉への無関心】ということだと思っている。
「座りっぱなしの生活」「冷凍倉庫での作業(筋トレ)」をしていても、私が自分の筋肉(もちろん身体全般のコンディションを含む)を意識し適切なケアをしていれば腰痛は発症しなかったと、現在は思えるからである。
また、腰痛が悪化したので私は発症から2ヵ月後に倉庫仕事を辞めて安静を心がけ、また仕事で長時間続けて座らないように工夫したが、それでも筋肉へのケアを始めるまで腰痛は治まらずどんどんひどくなっていった。
そもそも、
【安静(身体を動かさないようにする)】が事態をより悪くした原因ともいえるのである。
(誤解のないように補足しておくが、痛みがあるときには【安静】がまず最初の重要な対処であろう。私が今書いた【安静】の意味は、『私の場合は実際に狭窄症が発見されていたので骨がもっとズレるのではという誤った考えと、日々の痛みの増進を恐れてじっとしていることだけを考えてしまい、ストレッチヤマッサージで筋肉をほぐすというようなことを一切しようと思わなかった』という意味での【安静】である)
さて前置きが長くなったが、その私の腰痛は治まる気配すらなく、2016年7月初旬から2017年1月まで続き、厳密には現在(2017年2月)も100%までは完治していない。
最もひどい時期には、立ち姿勢や歩いているときは常に激痛があり、同時に両足にかなりの痺れもあり、5分も歩けないということがしばしばあり、ほんとうに気が滅入ってしまう日も多かった。
筋肉のケアの効果が出始めて、腰痛は9割以上は改善した。時に軽い痛みはまだ感じるが、それをケアする自分なりの方法を工夫して見つけたため日常生活にまったく問題はなくなっている。
この後、そこまでの経緯を書いていこうと思う。
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<最初の診断【脊椎分離症】>
私は小学生のとき、半年ほど腰痛に苦しんだ。
「成長期のもの」と医師に言われた。そのまま放置され治療は湿布くらいで何もされなかった。
そのころ町内会のソフトボールチームに所属してショートを守っていたが、激痛で動けない日があったことを痛みとともに鮮明に覚えている。
私自身のそのような腰痛の経験があるし、私の母が若い頃の事故による股関節の変形から姿勢が傾くようになり背骨が徐々に変形し、重度の腰部脊柱管狭窄症となり結局大きな手術した、というのを実際に見ている。
そういうわけで、私は腰痛には多少の知識と関心があった。
さて、突然始まった腰痛。
1週間経過しても痛みがまったく消えない。そもそも痛くない日がないのだ。
その痛みは時々軽くなるが決して消えず、時に激痛に変わる。痛みがあるからゆっくりとしか動けず、何かおかしな姿勢をしているわけでもないのに痛みが急激に増減したりするのだった。
痛みの箇所は、【仙骨の真ん中の上部】で、そこだけが集中的に痛い。
押してもなんともないが、そのあたりをコブシでトントン叩くとジンジンと痛みが響く感じがしていた。
私の症状の特徴は、【立っているとき、歩いているとき、背筋を後方に反るときに痛む】、座っているときや寝ているとき(うつ伏せて頭を上げ背を反るとき以外)は、ほとんど痛みがないということだった。
痛みは最初は我慢できるほどだったので、私は倉庫での仕事(筋トレ)もこなし、そのほかの時間は日常どおり座りっぱなしでパソコンのキーボードをたたき、痛みが消える日を待った。
が、痛みは消えず、痛みの強度は少しずつ増していった。
そうなると悪化させまいと考え動作は慎重になるし、痛みの記憶の恐怖で思い切った動作ができなくなる。いつも腰の様子が気にするようになる。
座っているときはほとんど痛くないので忘れているが、立つと激痛に近い痛みがし、ビクッとする。
「こんなはずはない。明日起きたら少しはマシになっているだろう」
と毎日祈るような気持だったが祈りは通じず、2週間ほどして近所の整形外科で受診した。
レントゲンを撮り、医師の説明を聞く。
「脊椎分離症かもしれない。背骨がずれてるように見えます」
「え、ずれてるんですか?大丈夫なんですか?」
「ひどくなければね。でもこういう人は多いんだ。老化したら多くの人がなります」
「どうしたら治りますか?というか分離は治るんですか?」
「自然には治らない。まあ痛いときは安静。痛くなくなったら筋肉を鍛えてもいいし」
「え、分離してるのに鍛えていいんですか?」
「痛くなければね、骨がグラグラしないように。分離症のスポーツ選手は多いんだ。まあ、しばらく通ってリハビリ室で腰を温めてみなさい」
その日は、言われるままリハビリ室で腰を暖め、湿布の処方箋をもらった。
とはいえ、これでは何がなんだかよくわからない。
分離症…かも?
じゃ、いつ分離したのだろう?倉庫仕事が原因?
この後、具体的にどうするのか?
マイクロ波で暖めていれば治るわけでもないだろう。分離というからには物理的に壊れているのだし。
安静といわれても、それまでも安静にはしていた。安静の意味が『ずっと寝ている』というレベルなら安静ではないが…。
数回通院してマイクロ波で暖めたが、何も効果はなかった。痛みがまったく軽減しないので治る気がしない。症状は、だんだん重くなり不安も増す。
「脊椎分離症なら、どんどん分離していくのかなぁ…。だから痛みが増しているのか?」
などと、素人考えをする。
ネットで調べると、分離症を持ちながら活躍するアスリートたちがいることを知ったので、【分離症】診断そのものをさほど深刻に思わずにはいられたが、やはりこれはマズイことだろう。背骨が分離してるなんて…。
とにもかくにも毎日腰が痛いのだ。どうにかしなくては。
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<MRIで【腰部脊柱管狭窄】>
が私の行った近所の整形外科医院は、私の苦痛についてほとんど無関心だったとしか思えない。
湿布やマイクロ波での暖めも治療ではあろうが、「老化」というのが説明の主ポイントで、それならもうどうしようもないことになる。
院長の医師よりも、理学療法士さんのほうが色々と説明してくれたし親身になってくれた。ただ腰痛は改善するどころか悪化した。(治療のせいで悪化したという意味ではない)
そもそも診断が、「レントゲン画像ではわかりにくいが腰椎分離症(だろう)」という曖昧さだし、骨の分離なら対症療法で暖めても根本的にはどうなるものとも思えない。
私は次に国立医療機関の整形外科に行った。(もちろん国立だからスゴいとか思うことはない。MRIがあり地理的に近いから選んだだけである。とはいえ「国立」だから期待感はあった)
MRI画像を見ての担当医の診断は、【腰椎分離症】ではなく【腰部脊柱管狭窄症】だった。それも最近の発症ではなく、かなり以前からの症状のようだということであった。
画像を見ると素人目にもわかる狭窄部がある。2箇所である。
私はそれまでにネットで腰痛に関する記事は読めるだけ読んでいたし、亡くなった母が同じ症例(重度)だったから、これがどういう症状かはすぐ理解できた。
母と同じ狭窄症なので「骨格が遺伝するのか?」とちょっと考えたが、私の骨格は父譲りだし、(もちろん見た目だけの話)、母の場合は若年時の事故による股関節変形から長年の悪姿勢によっての脊椎変形による狭窄症だったので、私の狭窄は遺伝ではなかろう。
では、小中学校のときのスポーツのしすぎだろうか。小学生のときの腰痛はすでにこの狭窄の症状が出ていたのだろうか、などと考えた。
「手術するほどでもないでしょう。様子を見ましょう」
「手術?」
「まあひどくなってしまったら、最終的には…です」
「治るんですか?」
「狭窄は治りはしません。物理的なものだから」
「ぐいぐい押して、元の位置に戻すとか…」
「そういうことはできません(苦笑)」
それはそうだろうな…、それなら手術は不要だもの。
「痛みの軽減には暖めたらいいんですか、冷やしたら…」
「炎症があれば冷やしますが、腰痛の症状が出てからかなり日数も経っているのでどっちでもいいです」
「どっちでも?」
「冷やしたほうが気持良いという人もいるし、暖めたほうが良いという人がいるので好みです」
「好み…?症状が出てからずっと痛くて生活に支障が出始めているんですが、痛みは何とかなりませんか?」
「安静ですね。痛みがひどいなら鎮痛剤を出します」
「安静にしてたら治るんですか。もうだいぶ安静にしているんですけど」
「治る人もいます」
(ということは、治らない人もいるということになる…)
座ったり寝てたりすれば痛くないし薬剤アレルギーもあるので、鎮痛剤はもらわず塗り薬だけもらうことにした。(つまり気休め)
MRIで正確な診断はついたが状況は何も変わらないままだ。
「今もまだ痛いし、明日も痛いに違いない」
ということである。
いったい、これはどういうことなのだ?国立病院にして、これだけなのか?
私の期待過剰だったのか?
診断はついたが、すぐには治療はしない。というか…鎮痛剤で痛みは緩和できるが、狭窄症については何もできないらしい。(手術はあり)
私は「どんより」した気分で、痛む腰をなるべく動かさないように帰路についた。
それから私は以前にもましてネットで腰痛に関する記事をとことん読んだ。
すでに生活を狂わせてる腰の痛みに対して、整形外科ではとりあえず何もできない(湿布、鎮痛剤、最後は手術以外…完治の保証はなし)というのだから、自分で何か道を探さねばならなかった。
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<骨ではなく筋肉原因?>
さて私は【腰部脊柱管狭窄症】となった。
腰の痛みがおさまらないことと、なんといってもMRI映像ではっきり背骨が狭窄しているのだから、その物理的な変形が増進悪化することが怖かったので、私はついに大好きな冷凍倉庫仕事(自分的には’筋トレ’)も辞めた。病人みたいで悲しかった。(実際に病人だが)
そして狭窄がひどくならないように生活全般を安静にした。
(そんなに簡単に狭窄の度合いが進行することはないのだが、そのときはムリをすれば即悪化するのではと考えていた)
ネットで色々読んでみて、【狭窄症に効くストレッチ】とかやってみたが、「下手なことして狭窄がひどくなるかも」という恐怖があるから、適当にちょこっとやってみるくらいで症状は全く改善しなかった。
「神経が走る管の狭まった箇所で神経が圧迫されるから痛いのです」
と医師は説明する。
医学書やネット記事にもそう書いてあるし整形外科系統の記事は(…私を受診した病院の医師も)、ほぼそのように断定する。断定である。
あとで気づいたのだが、私を受診した整形外科医は骨(腰痛だと脊椎)のことを言うが、原因として筋肉のことに言及することはない。
【腹筋背筋などの筋肉を鍛えて背骨を支える】⇒【背骨の変形が緩和される】というような趣旨では筋肉に言及するが、それはあくまで【脊椎構造】のためであり、【腰の痛みは背骨の不具合が原因である】という考え方に揺るぎはない。(これはヘルニアも同じで、【骨だけ】で考える)
背骨(脊椎・腰椎)とそれを支える筋肉。
筋肉。
そう、腰痛原因に骨からではなく筋肉からアプローチする説明があることを、私はすでにネットで読んで知っていた。それまではなんとなく「そんなこともあるのだろう」とくらいで読んでいたが。
【神経は圧迫されても痛みは感じない。腰痛の原因の多くは筋肉要因である】
【腰部ヘルニアや狭窄症の症状があっても痛みのない人も多くいる】
【そもそも人間が長く生きれば背骨は多少は変形するが腰痛の原因になるとは限らない】
などの要旨である。
それらは、【トリガーポイント療法】であったり【筋膜リリース療法】などであったりする。
(私は素人なので、この後の記述でおいてもこれらの治療法について、用語として言葉は出すかもしれないが、それらについての説明や意見などを書く気はないし書く能力もない。
ただ腰痛で悩み整形外科であやふやな対応しか得られないときには、これらに興味のある方が自分自身で調べてみて、その言わんとするところを読む意味はあるかもしれないとは感じている)
つまり、【腰痛の原因の多くの部分は骨ではなく筋肉にある】
と主張する人たちであった。
彼らは「骨」だけを注目する整形外科的な考えだけでは足りないと指摘する。
注目すべきは【筋肉】だと。
整形外科医でも、経験的にその考え方に同調して筋肉に注目した治療をしている医師もいるらしい。
私はそれらの【筋肉中心】の療法や考え方について興味深く詳しく読んだが、そのときはそれだけだった。
私が知っている身体は私のこの身体だけである。
私は狭窄症であり、実際に腰が痛い。
「私の場合は、映像でも明らかに狭窄症だから骨でしょ」
ということである。明快?だった。
私に、身体の仕組みについて知識があるわけでもない。医学の勉強も整体の勉強もしていない。だから、それらを読んでも、そのときは「ふ~ん」と感じただけだった。
また、私の母は明確な重度の腰部脊柱管狭窄症であり、大手術で大きな金属製の固定器具を背骨に取り付けて支え、やっと日常生活に戻れたのだ。
母の場合は、実際に【骨】の変形が腰痛・下肢の痺れなどの原因であった。私はそういう経験も持っていた。
だから、私はまだ【骨】から離れられなかった。
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<硬膜外ブロック注射1>
ネットで腰痛治療などと探すと、【ブロック注射】というものがずらずら出てくる。
もちろんそれまでにもブロック注射のことは聞いたことはあった。具体的には何も知らないのと同じだったが。
背骨の変形は治せない。(手術は変形を治すと言うより、骨を削って圧迫を解消するという意味では変形を治すわけではない)
とすれば、どうすればよいのか?
自然に骨の形や位置が戻ることはあるのか?
それとも整体的に、がちゃがちゃと位置を整えて戻すことができるのか?
ストレッチで骨の位置をずらすことができれば、狭窄部が広がって神経への圧迫が解消したりするのか?
素人である私は、いろいろ夢想する。
痛みがひどくなると、「手術で治るなら手術してもらおう」と考えるようになる。
私もそうだった。
街を歩いているとき電車で立っているとき、痛みと痺れで腰の力が抜けそうになるときなど、どうしてもそう考える。発症から4ヶ月過ぎた頃から、そういうふうな「痛くて立っていられない、歩けない」ときが増えていた。
しかし手術の治癒効果がそれほどでもない、という情報が溢れている。
同時に、年に何百件の手術実績があると胸を張る医療機関もある。
「最後の最後は手術です」
というのが整形外科的な本筋らしいことは確かなようだ。
手術かぁ…、
整形外科医も、人の体とはいえ無意味に切ったり削ったりできるわけがない。きっとそれが有効な治療方法に違いない、と常識的に考えるのが一般人である。(私も一般人)
でも、手術はやはり最後だろう。
とすれば…。
そこで【ブロック注射】である。
いろいろネットで読んでいると、
【ブロック注射は、痛みを緩和するだけのものではなく、痛みを抑制することで自然治癒力を助け症状を治すこともできる】という趣旨になっている。
「ふ~む、これはいけるかも」 (というより、もうこれしかないかも…)
と思った。
私は手術以外での整形外科的な最後の切り札?として、【ブロック注射】があったぞ!
という思いに駆られた。
ここまでくると、自分で言うのもなんだが『藁をもすがる思い』みたいになっている。自分が自分で気の毒だ。
かかりつけの国立病院の整形外科に行き相談した。
「うちにもペインクリニックはありますが、緩和や事故での緊急手術対応などに追われています。ペイン専門の病院のほうが良いかもしれません。紹介状を書きます」
と言われた。
私は予め、自宅周辺のペインクリニックをいくつか候補として見つけていたので、そのうちの一つに決め、紹介状をもらった。
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<硬膜外ブロック注射2>
さっそく、予約をとり受診した。季節は11月中旬になっていた。発症から5ヶ月…。
「ブロック注射の技には自信があるよ」という感じの、温和そうな先生であった。
先生は私のMRI映像を見て、私の症状を聞いた。
「まあ、やってみましょう」
期待できそうであった。
そのころの私の症状は、仙骨中央の激痛(MRI映像の狭窄部より10cm以上は下のところ)、両足の前側の膝を中心とした広い範囲でピリピリとしたかなりひどい痺れがあった。
調子がいいときは痛みをこらえて時に数キロ歩けるときもあるが、数分も歩けないときもあった。電車で立っていると冷や汗が出るときもあり、階段などは痛みと闘いながら必死で上らねばならなかった。
ベッドに横向きに寝転がり、お尻を半分出して待つ。
先生がきて、まず痛み止めを注射し、そのあと硬膜外に麻酔液を注入する。1分程度の時間である。
麻酔薬が入るときに、グググッ・ジワーッと背中の奥でなんともいえない感じがした。
「おお、入ってるぞ!」
というのがわかる。
「これは効くだろう」
と私は信じて疑わなかった。
ただ、一時的に痛みが消えても、数時間で効果がとれる場合もあるし、数日数週間効果が持続する人もある、ということを読んで知っていた。私は、どれになるのだろう?
もちろん、麻酔薬が数日も数週間も持続するわけはなく、長く痛みが消える場合は一時的な鎮痛で炎症が解消され、血液循環が正常化し痛みの原因物質が流され、血流改善によって自己治癒力が回復して治癒に向かう、ということらしい。
治癒といっても、狭窄などの背骨の変形が治るわけではないのだが…。
まあ理屈は大切だが、ある意味どうでもいい。
痛みよ、消え去ってくれ!
要はそれだけである。
30分ほど安静にして、会計を済ませ次回の予約を取って帰る。よほどのことがない限り、注射のあと先生と話をすることはない。先生はもう次の患者たちを診断しているのだ。
さて、初の注射後、私の大いなる期待と裏腹に会計をしているときから「?」であった。なんと、激痛がそのままなのだ。歩いて帰れるのか?と思うほど痛い。
もちろん、注射のせいで痛みが増したとかではなかった。もとの痛みがそのままなだけである。
それにしても…、
患部周辺に麻酔薬を入れるのだから、少なくともしばらくは痛みが消えるのではないか?
読んだ情報にもそう書いてあったし、先生もそう説明してくれていた。
駅まで歩き電車を乗りついで自宅まで30分。
痛みと失望感で、私は打ち砕かれた。大げさな表現ではない。
私の失望感は、それほど大きかった。
だが、まだ絶望ではない。
時間がたってから効き始めるという話もある。
先生の技量は素晴らしくても硬膜外ブロックは難しい技術であるだろうから、患部にちゃんと麻酔液が入らなかったのかもしれない。
そもそも私の狭窄部は2箇所くらいありそうだから、痛みが出ていないほうに打ったのかもしれない。
ブロック注射は、何度か打ってみて効果が出てくる場合もある。
などなど。
とはいえ期待が大きかっただけに、ほんとうにその日はがっかりした。
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<硬膜外ブロック注射3>
私は日記というものを書く習慣がない。
あえて言えば、仕事のメモを残す。これはトラブル防止とか次回の対応のためとかであるが、そのとき自分が何をしていたかが少しはわかる。
あとは、時々気になったことや面白いことがあったときに小文を書いておく。それが貯まれば大雑把な日記みたいなものにはなる。
それだけである。
そういう私だが珍しく『ブロック注射記録』というものを書いていた。
これはアンドロイド・タブレットにしてから移動中にメモを残す習慣ができたからで、気が向いた物事についてだけ書き残したりしている。
腰痛は、気が向いたら…どころではなく、最近の私の大問題であるから細かく記録したようだ。
私は5回、硬膜外ブロック注射をした。
結論だけ言うと、私にはまったく効果がなかった。
(もちろん皮肉でも何でもなく、私の腰痛が狭窄症によるものではなかったからである。この硬膜外ブロック注射は多くの人に有効な治療法だろうと、今でも私は信じている)
とはいえ、なぜ私にはまったく効果がなかったのか?
と考えこんだ。まだそのときは、筋肉ではなく背骨の狭窄症が犯人だと信じている段階だからである。
5回の私の治療記録を簡単に要約してみる。
<1回目>
- 注射位置は、狭窄しているところの上のほう。
- 注射直後も痛みは、まったく変わらず。
- 下肢の痺れもそのまま。
<2回目>
- 注射位置は、狭窄部の下部。これは、私が先生に「痛いのは前回注射した位置よりずっと下なんです」 と訴えたので。私の痛みの位置は仙骨部なので、それより下には打ちようがないのだが、私はそのときはまだ、それに気づかなかった。
- 痛みも痺れも、まったく変わらず。
<3回目と4回目>
- 注射位置は、2回目と同じ。
- 痛みも痺れも、まったく改善せず。
- 抗うつ剤を処方される。(飲まなかった)。
<5回目>
- 1回目と同じ位置。狭窄部上部。
- 痛みも痺れも、まったく改善されず。
- 抗うつ剤を飲むように催促される。(…飲まず。まあ拒否である)
このようであった。
ここで私が一番問題だと考えたのは、【一瞬一時でさえ痛みも痺れも緩和しなかった】ことだ。
これはショックだった。まったく効かないのだ。 そんなことがあるのだろうか?(もちろん、そういうこともあるだろう…)
ペインクリニックの医師も「匙を投げた?」とは思わないが、精神薬を飲めと言いはじめたのであった。
そのような精神に働きかける薬剤による治療法もあるようで、「痛みは患者の気のせいだろう」と医師に思われたわけではなさそうだった。事実、痛いのだから当然だが…。
とはいえ、まったくブロック注射が効かない上に、抗うつ剤(パニック障害にも効果ありと書いてあった)を処方されると、なんとも複雑で心境であった。
(ネットでこのような治療をすることがあるという事例を先に読んでいたから冷静に対応できたが、精神薬を使う理由をほとんど説明してもらえなかったから、何も知らねば不穏な雰囲気になったのではなかろうか)
ともかく私は腰が痛いのだし(それもときに激痛で毎日)、それは実体である。
それとも、この腰痛は幻覚???(これは冗談)
腰痛にはブロック注射がまったく効かず、あたかも精神のせい(気のせい?)にされてしまい、私は窮した。
昔テレビのドキュメンタリーで、「原因不明の痛みは身の回りの人にも医師にも理解してもらないことがあり、精神科にまわされることがある」という事例を紹介していたのを思いだした。なんか恐ろしいことである。
ブロック注射に期待をしていただけに、もうこの痛みから逃れられないのかという暗い気分になった。陽気なB型人間なのに。
その暗い気分のせいで、抗うつ剤が必要になるかもしれないぞ!(…笑えない)
妻にその薬を見せると、「腰痛で?」と不審がっていた。
「それ飲んだら、あなた、もっと陽気な極楽トンボになるの?そのほうが恐ろしいわ」
さて、私はどうすればいいのだろうか…と、かなり途方にくれたのだった。
(文のボリュームが増えましたので分割しました。この後は【光明編】に続きます。)
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