公立高校はたいへん:自主的オンブズマン [2]
公立高校はたいへん:自主的オンブズマン(2) |
私は自分の心根は善良なほうだと思うのだが、実は礼儀や躾を受け入れられない体質なのである。 社会生活のため『礼儀のあるような芝居』はできるが、相手が本当に礼に値する人間だと思えない限り礼儀正しくできない性格なんである。 そしてこの世に礼に値するような人間は多くはない。よって私は礼儀知らずとして行動することになる。不憫だ。相手も私も。 私は、そういう『基本駅な躾けの行き届いていない』人間なのである。 その『オンブズマン』に監視されていては、なにやらマズイぞ。 私は駅から学校まで時々パンを食べながら歩いているときがあるし、夏の時期はアイスキャンデーを2本くらい食べるときさえある。 講師室のエアコンが半分機能していないので、授業に出る前に汗だくになってしまうのはいやで、アイスで体を冷却する必要があるのだ。(言い訳) もちろん、さすがに学校近辺では食べるのを我慢し、通勤路の途中の川の土手を歩くときなどに周囲に気を配りながら食べる。が、自転車で通学する生徒に追い抜かれるときに見つかったこともある。 「先生、わたしにもちょーだい」 とか言われたり。 ふ~む、そういうところを見られてないだろうな…。 私は教職が本職ではないし臨時公務員でしかないから、自分が免職(・・・少しオーバー)されるのはなんともないが、その報告書に書かれたら学校に迷惑がかかるかもしれない。 私は、そのオンブズマンさんの話に、ちょっと戸惑ってしまった。 「そんな立派な(ちょっと迷惑な)人がいるんですか…」 「ええ、そうです」 私は通勤時にアイスやお菓子を(時々)食べ歩きしていることは(当然)言わず、 「この試験問題のチェックも、そのことに関係あるんですか?」 と尋ねた。 「ええ。その人はこの学校に子供さんが通っているわけでもなく、もうお子さんも独立されているような年配の方ですが、何かのツテで毎回学校の試験用紙を入手されて、問題そのものの妥当性だけでなく、問題文の文法の間違いや文章のわかりにくさを検証されているんです。なにか気づかれたことがあれば報告がきます」 「そこまで?」 「そうなんです。『この問題文は生徒にわかりにくいから誤答する可能性がある。生徒の未来がかかっているのだから、ちゃんとしなさい!』と叱られるんです」 「ははぁ・・・なるほど…。つまり(極めて限定された見方をすれば)善い人なんですね。自分のためにやってるわけじゃないし」 「まあ、そうです…。(だから始末が悪いんです)」 「ふむふむ」 「中間や期末テストだけでなく、朝の5分テストみたいなものも対象です」 「で、先生方もその人に注意されないように、いろいろ気を使うことに…」 「いや、その人がどうこうではなく、そういうのは全て生徒のためですから」 「はい、それはもう、もちろんです…」 私は限定された業務だけを任されていたので残業というものはなく、遅刻も早退もなかったから出勤退勤の時刻については気にする必要はなかった。 しかし通勤時にパンやアイスを食べながら歩いたり、缶ジュースを飲み歩いたりするのは自粛することにした。 (ポケットに入れて隠しながら食べることにしただけ…) そもそも通勤時の食べ歩きなどは、社会人として問題でもあり、教育的視点からも良くないことであるし。 登下校時の土手道で出会う生徒が、(そういう事情などは知らず、ただたんに私が突然行儀よくなったことに気づいて)、 「先生、最近は買い食いしないの?」 と、反省してまじめに(ポケットに隠し持っているが見た目には)何も食べずに歩いている私をからかったりした。 そう…先生は、そういうことやめたよ…。(やめたふり…) いちおう、1年間は教育者だし。 どうも世の中は、私が思ってたより厳しい(妖しい)みたいだぞ。生徒諸君! (このお題、完) |
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